弾性方程式の基本解を、弾性テンソルのみを使ってexplicitな形で書くことは、微分方程式論では重要であるが、また、境界要素法を用いた数値解析でも大いに貢献するものである。ところが、弾性方程式は、パラメターの多い方程式系であるため、従来の基本解の導出は、弾性方程式の種類によって、それぞれ固有な、高度な技を必要としてきた。非等方弾性体の方程式に対しては、近年、Strohの定式化と呼ばれる手法により、複雑な方程式系の中に普遍的な数学構造が存在することが見出されてきた。そこで、Strohの定式化を基にして、基本解の公式をsystematicに求める方法を提案し、3次元非等方的弾性体の一つであるtransversely isotropic弾性体における弾性方程式の基本解公式を与えた。 境界表面でのDirichlet to Neumann mapのシンボルから弾性テンソルが決定できるかという境界値逆問題を考察した。この問題は、弾性体の境界表面での変位(Dirichletデータ)と応力(Neumannデータ)との関係を観察することで、弾性テンソルが決定できるかという問題のモデル化である。transversely isotropic弾性体に対しては、Dirichlet to Neumann mapのシンボルからすべての弾性テンソルが、決定されるという結果が得られ、現在論文にまとめている。そこでは、Strohの定式化を基にして求めた、surface impedance tensorの公式がキ-ポイントとなる。この結果は、3次元非等方弾性体逆問題での決定的な結果であると考えている。
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