研究概要 |
本研究期間において,圧縮性Navier-Stokes方程式,特に3次元有界球環領域における圧縮性粘性流体のアイゼントロピックモデルに対する球対称解の研究を行った。気体の状態方程式を決定するパラメータの一つである断熱定数(=γ)に興味を持って研究を行い,この球対称解の漸近挙動に関し次の結果を得た。手法は主に,密度の表現式の評価,及びエネルギー法による。 1.初期値,及び外力に対する適当な条件のもとで,その大きさがγに依存した定数より小さければ,一様有界な時間大域解が一意に存在する。ここで一様有界とは,解のH^1-ノルムが時間に関し一様に有界であり,かつ比体積と密度が一様に有界であることである。この定数はγが1に近づくにつれ無限大に発散するが,その近づくスピードについても詳細な結果を得ている。またこのことにより,任意に与えられたポテンシャル外力及び初期値に対して,γが1に適当に近ければ,時間大域解は一様有界であることが明らかとなった。 2.1.と同じ条件のもとで,定常解が存在するための十分条件を得た。特に,任意に与えられたポテンシャル外力に対し,γが1に適当に近ければ,定常解が一意に存在することを定常解の具体的な表示によって示した。さらに1.で得られた時間大域解は,時間が増大するにつれ,この定常解にL^2-空間で指数的に漸近することも明らかとなった。 この結果は,γ=1のときの任意のポテンシャル外力に対する松村氏の結果,及びγ>1で,ポテンシャル外力が小さい場合の樋口氏の結果との整合性を得るものである。
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