研究概要 |
研究目的、実施計画課題の中で「相転移モデルの解の構造」に関して剣持教授(千葉大学)との共同研究により得られた成果の概要を述べる。 Penrose-Fife(Physica D,1990)によって導入された温度変化を考慮した相転移モデルの初期境界値問題が適当な関数空間を設定することにより、well-posedであること、即ち、解が一意的に存在し、かつデータに連続的に依存することを証明した。問題を変分法的に定式化し、Damlamian-Kenmochi(1996)の結果(劣微分作用素の方法)を使ってさらに一般化することが研究の出発点である。解の一意性とデータに関する連続的依存性の証明では、新しく導出された不等式が重要な役割をはたす。解の存在証明は、entropy functionalを使って示されるアプリオリ評価と劣微分作用素の方法とによる。得られた結果は既存の結果をすべて含む一般的なものである。本研究で導入された関数空間において問題を定式化することによりPenrose-Fifeによるモデルの変分法的導出の数学的意味の一端が明らかになったと考えられる。 問題のwell-posednessが明確になったことにより、解の定義する力学系の漸近挙動を詳しく研究する道が開かれ、今後の研究課題となる。その際には本研究でも使われたentropy functional(Lyapunov性を持つ)が重要な役割を果たすであろう。また本年度の研究では秩序パラメータが非保存の場合を扱ったが、秩序パラメータが保存する場合のwell-posednessを研究することも今後の課題である。
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