平成9年度において得られた成果は主に本研究の研究対象である走化性を伴う生物モデル(以後Keller-Segel系と呼ぶ)を単純化した系(以後Nagaiモデルと呼ぶ)の爆発解について以下の成果が得られた。 1. 球対称な爆発解は原点にL^1量を集中することにより爆発を起こす。以後このような爆発をchemotactic collapseと呼ぶ。 2. Nagaiモデルに関するリヤポノフ関数が有界ならば全ての爆発点においてchemotactic collapseを起こす。 3. 上記chemotactic collapseにおいて、爆発点に集中するL^1量の下限はモデル方程式の係数によって定まる。以後その量を臨界値と呼ぶ。 以上の研究により、爆発解のリヤポノフ関数の情報とNagaiモデルの定常解と関係するOrliczノルムの挙動を用いることで上記の成果が得られることがわかった。このことは、本研究によって新しく得られた知見である。 平成10年度においては、Keller-Segel系における爆発解並びに定常解についての成果を得た。 1. Ke11er-Segel系の爆発解についての成果 前年度に得られたNagaiモデルに関する新しい知見がKeller-Segel系についても適応できることがわかった。このことにより上記Nagaiモデルで得られた成果がKeller-Segel系についても得られた。 2. Ke11er-Segel系の定常解についての成果 解の総量をパラメーターとして、パラメーターの値による非定数定常解の解の存在並びに非存在についての成果を得た。特に、球対称解が存在しないパラメーターの領域と平成9年度の成果3で述べた臨界値に一致することがわかった。 以上の研究により、chemotactic collapseはKeller-Segel系並びにNagaiモデルの解の爆発についてきわめて標準的な爆発であることかわかった。
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