研究概要 |
Lie群や等質空間のスペクトル分解に現れる最も基本的な関数は帯球函数であり,それはある種の特別な可換な線型偏微分方程式系の解として特徴づけることができる.本研究代表者は1994年に大島利雄と共同で,そのような微分方程式を変数に対する対称性(BG型)の下で全て分類し書き下ろすことに成功した.本研究では,そこで得られた最も普遍的な微分方程式系を調べ,その解(拡張された帯球函数)を調べることを目標としている.本年度は ・まず,変数に対する対称性を他の型に変更したものに対して同じような微分方程式系が得られるかどうかの考察をした.その結果,非結晶群である2面体群に対しては三角関数や楕円関数を相互作用のポテンシャルとして持つような方程式系は存在しないことが示された(preprint). ・一方,基底固有状態がA型の因子化された方程式系はすでに分類されているがこの分類に現れる非線型関数方程式のWEB幾何学に基づく幾何的な解法を与えることに成功した.これによって懸案であった,解が周期性を持つことや楕円関数で書き表されることの説明を与えることができた(preprint). ・次に古典型から例外型への橋渡しの最初のステップとして,塩田徹治のMordell-Weil格子による構成に触発されて,例外型のWeyl群に対してそのルート系のデータを古典型から復活する一つの方法を与えた(論文). ・また,BC型の普遍な微分方程式系は楕円関数によって記述されているがこれを有理関数で表示した.この表示が固有関数の記述や極限移行操作に適していると思われるがそれらの研究が本研究の次年度の課題とつながっていく.
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