研究概要 |
変分的手法により非線型微分方程式の解の存在問題の研究を行った.特に本年度は(1)R^Nにおけるnonlinear scalar field equation,(ii)ハミルトン系の非有界軌道の存在等を主に扱った.(i)R^Nにおけるnonhlinear scalar field equationに関しては,まず軸対称な空間依存性をもつ方程式-Δu+V(|x|)u=u^pの正値解の一意性を考察し,Kwongによる一意性の結果の非常に簡略化された証明を得ることができた.またその一意性の応用として周期ポテンシャルをもつ非線型楕円型方程式-Δu+V(x)u=u^pのあるクラスに対してmulti-bump solutionが存在することを,特に無限個の正値解が存在することを示すことができた. (ii)ハミルトン系に関しては,2体問題型のポテンシャルV(q)〜-1/(|q|^α)(α>0)に対して無限から来て無限に飛びさる軌道の変分的な構成を考え,与えられたH>0をtotal energyとしてもち,さらに与えられた入射角,出射角をもつ軌道の存在を空間次元Nに関する制限なしでstrong force条件(α>2)の下で示した.ここで空間次元が2のときは回転数を有効に利用することができ比較的容易に証明はなされるが,N 3の場合は異なりR^N\{0}上のループ空間のtopologyに関する考察が必要不可欠となることに注意して頂きたい.なおH=0のときは古典力学における放物軌道に対応し,非常に興味ある問題であるが,その存在は今後の課題としたい. (iii)上記の(i),(ii)以外にもMoser-Trudinger型の不等式の最良指数についても研究を行い,Ogawa,Ozawaにより導入されたスケール不変なMoser-Trudinger型の不等式は有界領域の場合と異なり最良指数を達成しないことを示した.
|