W.G.Vincenti and C.H.Kruger著「Introduction to Physical Gas Dynamics」で提案された熱放射を考慮にいれた気体の運動方程式は、質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則の三つの保存則と、熱の幅射によって失われるエネルギーの従う楕円型微分方程式とより構成される。同方程式を一般化して得られる双曲型楕円型混合方程式系に附いて、本年の研究によって明らかとなった事実を報告する。 同方程式系が対称化可能であることエントロピー関数が存在することとは同値であり、対称化可能な系は、任意の定数状態に(十分小さな)摂動を加えた関数を初期条件とする初期値問題に対して、時間局所に解をもつ。さらに、代数的に形式化される安定性条件を課した場合、その局所解は時間無限まで延長可能である。こうして得られる大域解は、初期の定数状態に(時間のマイナス4分の1乗で)漸近的に収束する。 さらにその解は、対応する楕円型放物型混合方程式系の解に(時間のマイナス4分の3乗で)収束する。従って、大域解は線形拡散波及び非線形拡散波で近似されることが分かる。 以上の研究の後、双曲型楕円型混合方程式系において、楕円型方程式の二階微分項の係数を無限に小さくする極値問題に附いて研究した。この場合もやはり、その極限は対応する双曲型放物型混合方程式系の解であることが分かった。尚、この極限操作は、物理的には、ボルツマン和人ブゲール数と言う気体の状態を表す物理量の極限を取ることに対応している。
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