今年度は、非線形力学的境界条件を伴うPenrose-Fifeタイプの液体-固体相転移問題について研究した。この問題を表現する偏微分方程式系は、昨年度に扱ったCaginalp-Fixタイプのphase fieldequationよりも一般的な相転移現象を記述する。Penrose-Fifeタイプのphase field equationはCaginalp-Fixタイプのphasefield equationと比較すると非線形項が多いという点で数学的な扱いが難しくなる。ここで、未知関数の時間に関する導関数を含む固定境界上の境界条件を力学的境界条件(dynamic boundary condition)と呼ぶ。物理的には、対象とする物質が"薄い金属でできた容器に入っている"という状態を表す。この問題は、物質の温度、容器の温度、物質の状態を表す相関数を未知関数とする2階の放物型偏微分方程式の連立方程式で表される。解の一意性はCaginalp-Fixタイプの場合と同様に力学的境界条件の良い性質を活用することにより示すことができた。解の存在は、近似解を構成しその極限関数が解であることを示した。この間、不動点定理を二度用いる。 また、ヒステリシス作用素を含む境界条件を伴うステファン問題についても解の存在とその一意性に関する結果を得ることが出来た。
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