研究概要 |
本研究では,拡散の役割と非線形性の関係を調べるために,拡散のもつ性質のうち,通常予想されてこなかった意外な側面の発見を行い,それによって拡散のもつ性質を外延しようと試みてきた.現在のところ,拡散の性質が際立った状態で現れる問題に注目して研究を行っている.特に,研究代表者等によって近年発見された拡散誘導現象 反応拡散系に見られる拡散誘導爆発 の仕組みを研究している.爆発問題は,特異性のある問題なので,拡散のもつある性質が,拡大されて導き出されることが予想されるからである. また,拡散誘導爆発は,拡散の効果によって爆発しない常微分方程式系が爆発することがあることを結論づける興味深い結果である.この結果は単に拡散の役割が空間一様化だけでなく,非線形性との兼ね合いで爆発にまで影響を与えることを述べただけにとどまらず,モデル方程式を建てる際にも拡散のこの意味での役割も考慮に入れる必要があることを示唆している.ここで作られた方程式系は人工的なモデルであったが,数理生物学や化学反応などに現れるモデルにおいても,拡散誘導爆発が見られることが数値計算によって明らかになってきた. 拡散誘導爆発が起きる状況を把握するために,その自己相似解の果たす役割と方程式系の退化の関係を調べている.
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