研究概要 |
エルゴード的在庫管理問題は,十分時間が経った後の在庫量を最小にするにはどのような生産計画を立てればよいかという問題で、Fujita and Morimoto(1996)やBensoussan and Nagai(1991)で考えられたエルゴード的確率制御問題を一般化した問題と見なせる。以下、今年度の成果をまとめてみる: 1.エルゴード的在庫管理問題に付随する非線形方程式(Bellman方程式)をエルゴード的確率制御問題に付随する非線形方程式を解く際に発見した手法を拡張して解いた。前者は、経済現象をモデルにしているので、非線形項の形が後者の非線形項の形よりはるかに複雑である。しかし昨年度発見した手法を利用して、前者を解くことに成功した。この成果を、昨年8月にブルガリアのプロビディフで開かれた第8回国際微分方程式コロキウムで発表すると同時に、現在より一般化した理論にまとめて投稿準備にかかっている。 2.上の1.で述べたのは、エルゴード的在庫管理問題に付随するBellman方程式を解く方法であったが、これとは独立に今年度はBellman方程式を解くことなしに最適制御を特徴づける方法を考え付いた。この方法は、Fujita and Morimoto(1996)で得られた結果を帰納的に一般化したものであり、チェビシェフの不等式と呼ばれる比重不等式(実解析学で学部3年生が勉強するチェビシェフの不等式ではない)が使われている。この不等式はエルゴード的制御問題にしばしば現れることが分かってきた。また、この方法はBellman方程式を解いておらず、証明が確率論的であり、かつ簡潔である。この成果は、現在Applied Mathematics Optimizationに投稿した先日改訂論文を送り返した所である。
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