研究概要 |
フラクタル上での解析には一般のフラクタル領域上のラプラシアンの定義、ラプラシアンのスペクトルの分布とその漸近挙動など、その解決には全く新しい発想を必要となる問題が多く残されている。本研究の大きな目的は、この未踏の分野「フラクタル上での解析」の基礎を確立することにある。本年度は特にpost critically finite self-similar set上のnon-regularなHarmonic structureに対応するDirichlet formの性質を中心に研究を行い位以下のような成果を得た。 non-regularなharmonic structureから定義される自己相似なDirichlet formの場合には、格子点の全体の有効抵抗距離に関する閉包が自己相似集合に一致しないことを証明した。またBernoulli測度に関してこの閉包の測度が0または1であることを示して、どのような場合に0になるのか1になるのかを完全に決定した。さらに、Dirichlet formとBernoulli測度から定義されるLaplacianの固有関数が、自己相似集合上の連続関数に拡張できることを証明した。また固有値のcounting functionの漸近挙動がregularな場合と同様に決定できることを示した。また、(regularなharmocnic structureの場合も含めて対応する熱核の対角部分の時間が0に向かっての漸近挙動が、一般にスペクトル次元だけでは決定されないことを明らかにした。この背景には、始めに与えられたBernoulli測度と、Dicichlet formに付随するBernoulli測度が一般には異なるという事実がある。これまでに知られていた自己相似集合上の熱核の漸近挙動に関する結果(Barlow-Perlkins,Kumagai et al.Hambly-Kumagai)はこの2つのBernoulli測度が一致する場合を考察していたのである。
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