偏微分方程式の係数を決定するという逆問題とり上げその解の一意性については、観測を必要とするところが領域のすべての境界ではなく、ある条件を満たす部分領域であればよいことがわかった。観測データに対する連続性についても解析を行ない、条件安定評価を示すことができた。今まででは楕円型又は放物型作用素に対してBukhgeimらがCarleman評価を用いて一意性などを議論し一応の結果が出されていたが、双曲型作用素に対しては本質的にpseudo-convexな領域にしか普通のCarleman評価が成り立たないためこの方法には限界があった。これに対しては双曲型のMixed Problemなどで用いられるLopatinski条件の考えをもとにして、境界データ込みのCarleman評価を導き、それを用いることで逆問題の解の一意性を部分観測のもとで示した。この結果は作用素の種類(双曲型、楕円型、放物型)には依存しないものであり、一般の形状の領域に対しても適用可能である。また熱方程式の解と初期値に対する評価を導いた。これは局所的Gauss-Fourier変換と関連するものであり、熱方程式の初期値問題の解の時刻ゼロの近傍での減衰オーダーから、初期値のサポートの位置の情報を得るもので、いわゆる逆問題の一つである。更にこれと関連して熱方程式及びシュレディンガー方程式に対するAsymptotic Unique Continuationを特殊な重み関数を用いて示すことができた。一般的にCarleman評価を用いると偏微分方程式の解の一意接続性が得られるが、熱方程式などに対しては、t=(定数)の平面の一部において方程式の解がexponential orderでゼロになるならば、その状態を同じt=(定数)の平面の他の部分(近傍)に伝えるというものである。今後はこの様な新しい形のCarleman評価を導き、それに基づいて逆問題の解の一意性を考察していく予定である。
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