近年の集合値解析学の発展および目的の多彩化著しい今日の社会の発展に伴い、目的関数が集合値写像で表される最適化問題の確立が求められ、研究されつつある。しかし従来の集合値最適化の研究は、単にベクトル値最適化の拡張としてとらえられてきた場合が殆どであり、実社会の問題には適用できないものが数多く存在していた。本研究ではこれらの状況を鑑み、従来の考え方の欠点を指摘し、実社会への応用力を持った新しい集合値計画法を提唱し、基礎理論を確立するとともに、現実問題への応用を考察することが目的である。本年度においては以下の研究を行った: 【基礎概念の確立】 昨年度導入した集合値計画法における自然な解の評価基準を元にして、従来の集合値写像に関連する種々の概念(凸性、半連続性、鞍点、微分等)を自然なもので定義し直し、従来の概念との関連やそれらについての様々な性質、特徴について調べた。 【基礎理論の確立】 2つの有用と考えられる解の評価基準に焦点をしぼり、それぞれの集合値最適化問題に対する解の存在定理、強双対定理、鞍点定理、およびそれらの元となる諸定理を導いた。 【具体的問題への適用】 これらの基礎理論を、多目的ミニマックス問題などの幾つかの具体的な最適化問題に適用することにより、本理論の有効性を確認した。 【研究会等における発表を通じた意見交換】 これらの結果を、国際学会NACA98(International Conference on Nonlinear Analysis and Convex Analysis)およびICNPVI(International Conference on Nonlinear Programming and Variational Inequalities)をはじめいくつかの研究集会等で発表し、本研究に対する意見を広く求めることが出来た。
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