研究概要 |
報告者は、量子確率論における独立性・極限定理・非可換確率過程に関する研究を、特に、モノトーンフォック空間を素材に用いておこなった。本年度は以下の研究成果が得られた。 1. 非可換Poisson過程の構成. モノトーンフォック空間上に、生成演算子・消滅演算子・保存演算子の自然な一次結合を作る事によりPoisson過程の非可換アナローグを構成することができた。この非可換確率過程は、ある非可換Bernoulli過程の(小数の法則のタイプの)極限過程であることがわかり、その意味で、非可換Poisson過程とみなす事ができる。この非可換,Poisson過程に付随する確率分布の密度関数を具体的に求めることができた。 2. 自由ブラウン運動に非同型な半円的ブラウン運動の構成. 重み付きのモノトーンフォック空間を導入し、その上の非可換確率過程について調べ、適当な重みを与える事により、モノトーンフォック空間上にWigner半円則に従う非可換ブラウン運動で、かつ、Speicherの自由ブラウン運動とは同型ではないものを構成することができた。非同型性は、相関関数の計算から導かれる。また、あらゆる可能な重みを考える事により、複数の非可換ブラウン運動が得られるが、これらのブラウン運動によっては、ガウス分布は達成できない事がわかった。
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