研究概要 |
stochasticな無限系モデルの1つである格子気体モデルは、様々な物理現象を厳密に解析するための、重要なモデルである。特に、平衡状態への収束に着目すると、物理的に興味深い量が現れると考えられている。数学的にはd次元正方格子上の配置空間上のMarkov過程として記述され、1つの格子点には高々1つの粒子しか存在しえないという制約のもとで時間発展していく。これは一種の保存則であるが、保存則の存在そのものが、非常に長い範囲にわたる相互作用の下で系が時間発展しなければならないことを意味しており、この結果、平衡状態への指数的な速さの接近は起こらない。そこで、このモデルに対してどの様な型のエルゴード的性質が成り立つか調べ、平衡状態への収束の速さに関する次の部分的な結果を得た。 以下、可逆Gibbs測度の下で平衡状態にあるプロセスに関する(粒子数同士の)相関関数をβ(x,t)で表す。 定理 ジャンプ率の系は(平行移動不変、レンジが有限、非退化、といった)標準的な条件および、あるポテンシャルに対して詳細釣合の条件を満たすとする。さらに、そのポテンシャルは十分小さく、対応する一意なGibbs測度は十分な混合性を持つとする。このとき、次が成り立つ。 <lim inf>___<t→∞> S(0,t)t^<d/2>【greater than or equal】X(det(4πD))^<-1/2> ここにx=Σ_xS(x,0)はstatic compressibilityと呼ばれる量、Dはbulk diffusion matrixと呼ばれる対称正定値d×d行列である。 この結果は、九州大学(平成9年9月)および東京大学(平成9年11月)における研究集会において発表されている。今後はこの結果を基に、様々な「長時間揺動の問題」についての議論を深める事が期待される。
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