ボルツマンマシンに代表される最小値探索問題は、最小値でない極小値をいかに回避するかが最大の問題である。このために焼きなまし法や遺伝的アルゴリズムの確率を用いた手法が試みられている。この場合簡単に言えば、極小値を回避するために確実に決まった方法でなく、あいまい性をふくませることにより目的に合った結果を得ることができる。この発想はファジィ理論における「あいまい性」に通じるところがあるが、あいまい性は「ランダム」だけにより得られるわけではなく、もっと別の視点から見直すことによって、よりこの問題の本質に迫ることができると考えた。そこで、本年度は最小値探索をファジィ理論を通して理論的に解析する問題に取り組んだ。 ファジィ推論の立場から最小値問題を考えるとき、ファジィ合意演算における推移率の妥当性に疑問を持つにいたった。推移率は通常の合意であれば自然に成り立つ性質であるが、ファジィ演算の場合、論理演算における「かつ」や「または」に対応する演算や推移性をどう一般化するかによって状況が変わるが、それらを詳しく調べて、合意ごとに成り立つ最大の推移性を見つけることに成功した。1997年度日本数学会秋季総合分科会、1997.9.31東京大学教養、日本ファジィ学会あいまいな気持ちに挑むワークショップ 1997.10.17東京工業大学において発表) また、最小性をファジィ測度で表すことを考えるとき、デンプスター、シェイファー理論に基づく、べき集合上の測度を用いたファジィ測度の表現が、その同定に有効であると考るにいたり、無限集合上のλ-ファジィ測度に対してその表現が可能であること、ファジィ測度同士の絶対連続性が対応するべき集合上の測度同士の絶対連続性とほぼ同値であることを示した。(Banach空間、測度に関するシンポジウム、九州大学H8.1.31で発表)
|