昨年度の研究において、ファジィ理論の研究を通して、ボルツマンマシンに代表される最小値検索問題について考察を重ねてきたが、今年度は現実的な必要性ということを特に念頭において、これらを発展させることに関する研究を行った。一般的に、このような手法が応用される場面では、ある種の評価関数が最小になることで問題を解決するという設定が必要で、数学においてこれを扱う場合、空間の設定も含めてあらかじめこれが与えられている場合が多い。しかし今年度取り組んだ情報科学の分野だけでもそのあり方は多種多様であるため、特に対象を文字認識の分野に限定してその解析を行った。 現実的な問題を最小値探索問題に帰着させる場合、どのようにモデル化するかということと、実際の場面においてどのように初期分布を与えるかということが、この手法が有効に使えるかどうかということの重要な要素であると思える。当初収束の速さの向上をその主たる目的にする予定であったが、現実的な問題においては効率の良いモデル化と初期設定(初期分布の決定)に影響を受ける部分が大きく、特に隠れマルコフモデルを用いた手書き文字認識におけるパラメータの決定、手書き数式認識における最小問題へのモデル化、活字文字認識における認識速度の向上という場面において、上の事項に関する研究を行った。 手書き文字認識では次遷移候補が限定されているモデルにおいて、生産死滅過程を一般化した形で隠れマルコフモデルの初期値を与えそれを元に認識アルゴリズムを作成し、3rd.Asian Technology Conference in Mathematics('98.8於 筑波大学)において発表しそのProceedingに掲載された。数式認識においては、数式の状態判定を最小化問題に帰着させアルゴリズムを改良し、活字文字認識に関しては、特徴ベクトル空間での分布を考慮した上で検索文字を対象外と判断する機能を持たせた。これらについて電子情報通信学会PRMU98(1998.12.於 大分大学)において発表した。
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