今年度は特異点閉じ込め法を用いてさまざまな離散可積分系の厳密解を構成し、対応するγ函数の構造を調べることを目標として研究を進め、以下の結果を得た。 1.離散ソリトン系のγ函数の構成に対して、特異点閉じ込め法が簡単かつ強力な方法であることを示し、さまざまな方程式に対して解を構成した。 2.第2種の離散型パンルベ方程式の有理解を構成した。それらはLaguerre多項式を要素とするある行列式を用いて表現され、連続極限で第2種のパンルベ方程式の有理解に対するDevisme多項式表示に帰着する。 3.差分間隔を任意函数に拡張した離散ソリトン系の解およびその「超離散極限」を議論し、ある種のソリトン・セル・オートマトンを構成した。 さらに、来年度に行う研究の予備研究として以下の結果を得た。 4.第4種のパンルベ方程式の3つの系列の有理解の行列式表示を研究し、そのうち二つの系列はHermite-Weber函数を要素とするWronskianで表されること、また残りの一つはSchur函数の特殊化として表されることを示した。 以上の研究で、特異点閉じ込め法が離散系の一つの解析法として確立されたと考えている。また、離散パンルベ方程式の有理解も特殊函数解と同様非常に美しい構造を持っていることが明らかとなった。来年度はこの結果を踏まえて離散可積分系や超離散系の背後の数理に踏み込んで行きたい。
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