研究概要 |
本年度は、あすか衛星による観測で得られた超新星残骸のデータの解析を行った。 ROSAT衛星が発見したG156.2+5.7の観測データの解析から、この超新星残骸には400万度程の高温ガスからの軟X線放射以外に少なくとも10keVのエネルギー領域まで延びる、硬X線成分が存在することがわかった。この硬X線成分について、高温ガス起源、高エネルギー電子からのシンクロトロン放射起源の2つの可能性を検討した。 私達が進めているあすか衛星を用いた銀河面サーベイ観測で、多数の超新星残骸からのX線放射を検出することができた。このうちでX線強度の強いものについて、X線スペクトルの特徴を調べた。G347.5-0.5では、明確なシェル構造が検出できたが、このシェル部分には輝線が見られず、非熱的放射であることがわかった。これは高エネルギー電子からのシンクロトロン放射と考えられ、超新星残骸の衝撃波面で粒子加速が行われている可能性を示唆するものである。このような超新星残骸は、SN1006につづき2番目の発見である。また、G344.7-0.1,G349.7+0.2,G15.9+0.2からは硅素や硫黄からの輝線がはっきりと検出でき、超新星爆発の際に生じた衝撃波によって加熱され生成された、高温ガスからの放射が卓越していることを観測的に明らかにした。観測から得られた高温ガスの温度は、700万度から1000万度程度であった。こうして得られたガスの温度、超新星残骸のサイズ、X線光度などを用いて、超新星残骸までの距離や超新星が生じてからの経過年数を推定することができた。
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