私は、高赤方偏移クェーサーの環境について、次のような研究を行った。まず、クェーサー活動性とその大きなスケールでの環境との関連を調べるため、赤方偏移1.1に存在する超銀河団スケールのクェーサー集団領域において可視・近赤外線での広視野撮像を行い、これらの領域での銀河のクラスタリングの性質を調べた。その結果このクェーサー集団に属する5つのクェーサーの少なくとも3つの周辺に銀河団スケールの密度超過を検出した。このことから、クェーサー集団は、銀河の超銀河団分布構造をトレースしているのではないかと考えられた。とくに、クェーサー1335.8+2834領域ではその銀河団を構成する銀河の空間分布、及び測光学的性質の詳細な解析を行い、銀河団恒星銀河の進化の状態についても詳しく研究した。また、これまで得られたデータからは、3つのクェーサー周辺の銀河の測光学的性質は比較的よく似ていることもわかってきた。 クェーサー母銀河、すなわち、銀河スケールでのクェーサー環境の性質を調べるための研究も行った。赤方偏移1.1のクェーサーについてR、I及びKバンドの撮像データを得て、中心核光の差引を行い、母銀河の色、光度を評価した。その結果、このクェーサー母銀河は、非常に明るく、また、青い銀河であることがわかった。これらの解析は、すばる望遠鏡によるクェーサー母銀河の観測につながるであろう。また、野辺山観測所などで得たデータなどを用いて、赤方偏移4.7のクェーサーBR1202-0725について、クェーサー母銀河のガス成分についての研究も行った。
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