我々の銀河系に広がった希薄な星間ガスは、分裂・収縮を繰り返し、巨大分子雲・分子雲・分子雲コアといった階層構造を形成する。これらガスの塊のうち密度の高い領域(分子雲コア)では、生まれたばかりの星が観測され、星間ガスの繰り返される分裂・収縮の最終段階で、星が形成されることが認識されるようになってきた。また、最近の観測によると、ほとんどの星が連星系をなして生まれることが明らかになってきた。本研究の目的は、密度の高いガス雲の分裂・収縮過程を調べることにより連星が形成されやすい理由や形成される連星の物理的性質を明らかにすることである。 前年度の研究から、磁場に貫かれた分子雲コアが重力収縮すると、その中心部は、初期条件にあまり依らない、温度のみで決まるガス円盤(自己相似解)に近付くことが明らかになった。さらにこの円盤は収縮を続け、細長い棒に変形することが分かった。 本年度の研究から、この円盤は、さらに収縮すると、複数の塊に分裂することが分かった。さらに中心部には、回転平衡状態に近付いた円盤部分が形成され、ガス塊+ガス円盤の系へと進化する。幾つかのコアは、形成途中で近傍のコアと合体し、大きく成長する。本研究から、分かった重要なことは、星形成領域に際だって多く存在する磁気分子雲コアは、重力収縮過程において、はじめ円盤に変形し、次に細長い棒に変形し、最終的に複数のガス塊に分裂しやすいことである。つまり、星形成の標準プロセスは、従来までに考えられていたような単独星形成ではなく、連星系形成であると言える。最近の観測では、若い星の少なくとも半分は、連星系であることが分かっている。この観測事実は、磁気分子雲コアの重力収縮過程の一般的な性質であることが分かった。
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