これまでの開発では、天然ダイヤモンドを含めて幾つかの製造方法によるダイヤモンド素材を入手し、プロトタイプX線検出器を製作してきた。製作したプロトタイプ検出器に対しては、ダイオード特性の測定やα線照射実験を行ない、高温高圧法による人工ダイヤモンド素材が最も有望であることがわかった。そのα線照射によって得たエネルギー分解能はAm-241からのα線(5.5MeV)に対して16.5keV(FWHM)という値であり、シリコン半導体検出器に匹敵するエネルギー分解能を得ている。また、Cd-109からのX線(22.1keV)を検出することに成功している。 このプロトタイプX線検出器の開発では、開発の鍵を握る微妙なパラメータが多くあり、検出器を製作するに当たっては多くのバリエーションの試行錯誤が必要となる。したがって、今年度はプロトタイプ検出器の基礎データを収集することを目標として開発を行なった。 製作した検出器に対しては、α線照射実験や漏れ電流の測定など種々の基礎実験を行なった。その結果、Al-PダイヤとしてAl側から放射線に有感な空乏層が生まれ、電圧を印加するとともにAu側へ成長するが、Au側も抵抗接触になっておらず弱いバリアーがあるため、全体が空乏層になっていない、という結論を得ることができた。従って、さらに高エネルギー分解能を達成するためには、Au側を抵抗接触させる必要がある。現在、ダイヤモンドのAu側表面を水素終端する方法を採用し、水素終端ダイヤモンドによる検出器の開発を進めている。
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