次世代の長基線光赤外干渉計においては、長ストロークかつ高速遅延変化に対応できる精密な直動機構(光遅延線)が必要である。さらに、干渉縞のより精密な計測を可能とするためこれまでにない高い性能が求められる。本研究では、そのような光遅延線の開発途上でクリア-しなければならない技術的課題の中核部分である、加速度を抑制し等速性を確保する方法の研究を行っている。 本研究では、我々の要求を満たす光遅延線の形態として、反射鏡を搭載した客車を電車が押してレール上を走る物を採用し、電車客車間と客車反射鏡間を防振ゴムで接続してボイスコイルや機械振子式での制御の複雑さを回避する形を追求し、モーターはダイナミックレンジと低速安定性からステツピングモーターをマイクロステップドライバーで駆動する方法を採用し、駆動輪の位置は光軸の速度変化を最小限に押さえるため電車の中央とし、テストを行った。800m基線対応の60mm/sの遅延変化では、5msRMSで約20nmと目標の約2倍の走行残差まで迫っており、実用化はこの方向でパラメーター試験を進めれば達成されるだろう。 電車客車間と客車反射鏡間を防振ゴムで接続し種々の速度での等速性を測定すると、10〜200Hz付近で走行残差の減衰が見られた。駆動部の非等速性が最も大きな誤差要因であるとの見解から、ギアダウンの方式を試験したが、1/100ハ-モニックギア+8cm径の駆動輪とギアなしで12mm径の車輪による直接駆動との比較を行い、ギアなしで良好な結果を得た。また、車輪径、ベアリングの種類・保持方法なども比較試験をしたが、駆動側のノイズのため有意な結果は得られていない。摩擦変動の非常に小さいベアリング保持方法を考案し試験中である。等速性を確保するためゴム等で弱い結合をすると制御性が劣化するので、今後は制御方法も含めた試験が必要である。
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