近年、天文学では位置天文的手法による発見が相次いでいる(銀河NGC4258や我々の銀河中心における巨大ブラックホールの発見など)。VLBI位置天文学はこの新分野を大きく開拓すると期待され、国立天文台においてVERA計画が推進されている。 VLBIによる位置天文学において最大の課題は、大気揺らぎによるフリンジ位相の乱れの除去である。特にミリ波帯でのそれは、位置計測の精度を左右するにとどまらず、感度そのものを制限している。 位相補償の手段として近接する天体からの電波を用いて、乱れを補正することが考えられている。その具体的な方法として2つある。一つは一台のアンテナを振って二つの天体を交互に観測し、位相さを補間するアンテナスイッチング法。もう一つは2台のアンテナを併設し、それぞれが個々の天体の電波を受けるペアアンテナ法である。この二つの方法についての優劣を明らかにするため、通常のVLBIデータ(43GHz帯、SiOメ-ザの観測)の位相変化を用い、スイッチング法とペアアンテナ法での観測シュミレーションを行った。 その結果、ペアアンテナ法に比べスイッチング法は、間欠する時間の位相を補間するさいに誤差を発生させ、コヒーレンスを最大70%程度に落としてしまうこと。またアンテナを振るための時間、他方の天体の電波を受けるための時間などで、観測時間を25%にまで低下させ、その結果、コヒーレンスの低下とあわせ、感度を50%以下にしてしまうことがわかった。これらはスイッチング法はVLBI位置天文学にとって、不利な装置であることを意味する。今後、感度の低下に加え、位置精度に関するシュミレーションを行う予定である。 他に、今井らと天体メ-ザ源の研究を行い、晩期型星での質量放出にかかわる、加速現象をとらえることに成功した。
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