国立天文台では銀河系のメーザ天体を10マイクロ秒角精度で測り、その構造やダイナミックスを明らかにしダークマターの解明をめざすVERA計画を推進している。VERAは相対VLBI法を利用してメーザ源の位置を正確に測ろうとするものだ。その技術的な側面についていくつかの検討を行なった。 (1) 観測局配置と位置測定精度:天体構造の位置測定への影響 10マイクロ秒角の分解能で天体を見ると、点源は存在しない。天体の大きさや構造が位置決定精度に影響をおよぼす。観測局配置と位置測定精度についてシュミレーションを行なった。その結果、一点源に対しては局配置の広がりが大きいほど、つまり最大ベースライン長に比例して測定精度はあがる。ところが、天体の構造が複数点源の場合、サイズ(例えば3ミリ秒角のガウス輝度分布)を持つ場合、UVカバーの埋まり方、短基線(300キロ程度)の存在が重要になってくる。つまり天体の構造を把握できることが、その天体の位置を求める上で重要であることがわかった。 (2) 大気位相補償法とアンテナ方式 VLBIではこれまで、大気揺らぎによる到来電波の位相乱れがネックとなって高精度(=サブミリ秒精度)の天体位置測定はできなかった。VERAは相対VLBI法(=同時または交互に近接参照電波源を観測して、大気揺らぎを補正する)によってこの壁をやぶるものである。交互に観測するばあい、アンテナのスイッチング周期が大気の変動速度に比べ十分に短い必要がある。この点について実際のVLBIデータ、VERA観測候補地(鹿児島、父島)での衛星電波を利用した大気位相モニターの結果から43GHzVLBI観測ではスイッチング周期は10秒以下、4秒程度であることが明らかにしている。VERAアンテナ方式の決定に影響を及ぼす結果である。 (3) 天体メーザの研究 VERAの観測対象となる晩期型星のひとつ、IRC10414のSiOメーザ、電波銀河NGC315の水メーザ、オリオンKL星生成領域のスーパーメーザのVLBI観測(JNe t、VLBAによる)、野辺山45mによる系外SiOメーザの探索などを共同で行なった。
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