粒子加速器の超高エネルギー化にともない、荷電粒子と電磁場の相互作用に起因する物理現象に関して、これまであまり問題視されることがなく未検討であった問題の解明がさまざまな場面で必要となってきている。とりわけ、コヒーレント放射の現象解明は次期大型線形加速器の実現に向けては避けて通れないものの一つである。本研究課題に対し、研究計画の前半にあたる本年度は、大別して以下の3つの作業を行った。 1.コヒーレント放射の数値的取り扱い方法の検討 既存の軸対称航跡場解析コードをベースに、コヒーレント放射解析のため3次元コードに拡張するにあっての定式化、およびプログラムのコーディング 2.Lienard-Wiechert場の詳細な理論研究 Lienard-Wiechert場の周波数構造および放射パターンを、さまざまな電子速度、バンチサイズ、電子軌道形状に関し計算し、どのような粒子パラメータにおいてコヒーレント放射の状況が起こりえるかを調べ、コヒーレント放射線値解析コードにおける入力データにあたる部分を整理。 3.超高精度荷電粒子シミュレーションテクニック コヒーレント放射現象時の場の荷電粒子への正確な反作用を計算するため、一般に数値解析の精度が極端に低下するとさている超相対論領域においてさえも、高精度で軌道計算が行えるスキームを検討し、プログラムのコーディング、さらに動作確認を実行。 本年度の成果をベースに、研究計画の最終年度にあたる次年度には、上記、2および3の結果を1に統合する形でコヒーレント放射数値解析コードの完成をめざす。最終的には、同コードを実際のリニアコライダーのパラメータに適用し、当初目的であるリニアコライダーでのコヒーレント放射の影響に関して考察する。 なお、1のコヒーレント放射数値解析コードの検討にあたっては、この分野の世界的な第一人者であるK.Bane氏(スタンフォード線形加速器センター、米国)を招へいし、研究目的を詳説したう上で、本研究計画に関して研究討論を行った。
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