ここ数年の研究により、超対称性ゲージ理論や、超弦理論の非摂動論的解析がめざましい進歩を遂げてきた。ある種の超対称ゲージ理論においては、それが厳密に解けることがわかり、それまで仮設でしかなかったことが具体的にいえたり、新たな予言を示唆することができつつある。また、超弦理論においては、多数ある超弦理論の相互の関係が予測され、弦理論の大統一理論の構成が始まっている。またそれについてのより新しい構成法が提案され、その解析に対するより精密な研究がなされてきて、より根本的な定式化が必要となってきている。 そして、本研究課題における一つの目標はそれらの解析に対しての、定性的理解からより定量的理解についてであったが、このことについては着実に成果をあげてきた。 まず、超対称ゲージ理論については、強結合領域における、共形不変な理論となる点付近での物理量の具体的な計算が可能となった。この事自身は一つの成果としてとらえられるが、しかし、その反面その物理的な解釈について、今のところ逆に理解しにくいものとなっている。これについては、来年度以降の課題である。 そして、今年度重点的に研究を進めてきたのは超弦理論の解析についてである。タイプIIと呼ばれる超弦理論では、その強結合領域においてはゲージ対称性の回復する点がみられ、そのまわりでは通常の超対称ゲージ理論の弱結合展開が可能となることが知られている。本研究課題において強結合展開の具体的な技術を開発することができた。 超弦理論についての一つ目の成果はは次のようなものである。まず物理量を幾何学的にとらえ、それを微分方程式の形にしてその解をもとめるが、強結合領域におけるその具体的な解の形が、系統的に求められることをしめされた。このことについては、すでに雑誌に掲載されている。 さらに二つ目の成果としては、その微分方程式の解から物理量を構成する具体的技術を開発することができたことである。現在それを、場の数の少ない場合に対して適用し重力の補正を含めた物理量の計算を遂行することができている。これについては、現在論文を執筆中である。 これらは、超弦理論のここの解析としては大きな前進とみられるが、一方、弦理論の統一的な理解ということに対してはその研究の進展を欠いていることは否めない。そのため来年度はこの方面の研究が急務と思われる。
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