中性子ドリップ線近傍の核では、中性子対相関への連続状態からの寄与が重要であり、これを平均場近似で扱うには、平均場と対相関場とを対等に扱うHartree-Fock-Bogoliubov(HFB)法の開発が必要である。我々は、まず、Hartree-Fock(HF)解の一粒子状態で基底を張り行列操作によってHFB法を解くという「二基底法」を、球対称コードを新規に作成して検討した。その結果、正エネルギーHF一体状態が箱全体に広がるため、この方法は効率的でないと結論した。 次に正準基底による解法を研究した。正準基底は原子核の近傍に局在した一粒子状態であるため、少数の一粒子状態でHFB解が記述できる可能性がある。その検討のため3次元正方メッシュ表現によるHFコードおよび正準基底HFBコードを全く新規に作成した。正準基底表現では、一粒子ハミルトニアンが状態に依存性するようになる。このため下記の2つの重要な影響が生じる。 (1)最急降下法による変分の各ステップ毎に一粒子状態間の直交性を保つための工夫が必要になる。この拘束条件付変分の為に我々は未定乗数法を採用し、その精度を詳しく調べ、方法を改良した。 (2)素朴な最急降下法を用いると、HFB解への収束がHF法に較べて桁違いに遅くなることが判明した。我々はこの原因が一粒子状態によって緩和時間が数桁も異なるためであることを見出し、緩和時間を均すように各一粒子波動関数を尺度変換することで収束を劇的に加速することができた。 これらの工夫により、正準基底HFB法は、実用的で有望な手法たりうるという展望が開け、さらに、中性子過剰核を平均場法で扱うための標準的な手法になるであろうとの期待をいだかせた。
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