研究概要 |
昨年度にゲルマニウム検出器にwaveform digitizer,パソコンを接続して波形データを取るシステムを組み、超高計数率下でのpile upの分解に成功したが、波形情報のみでは2つのパルスが短い時間差で重なるときに分解不能になる。そこでTFA/CFD/multi-hit TDCで時間情報を取り、これを解析で利用することでどこまで性能が向上するかを調べた。アンプの整形時間6μsecにおいて、通常の方法では約40μsec以下の間隔の2つの事象はpile upするが、今回開発した方法では3μsecまで接近した事象をエネルギー分解能を殆んど悪化させずに50%以上の確率で分離でき、耐高計数率を約1桁上げられることがわかった。これらの結果をもとに、実用的なシステムを組むための準備を開始した。 この方法は、ハイパー核のガンマ線分光への利用を考えているため、実際の実験環境を詳しく調べる必要がある。別の科研費で建設したゲルマニウム検出器システムを用い、4-7月にKEKで、12月にBNLでハイパー核のガンマ線分光実験を行ない、初めてゲルマニウム検出器によるハイパー核ガンマ遷移の検出に成功した。ここでは波形解析をしない従来の回路系(ただしプリアンプの改良や特殊なshaping amplifierを用いた特に高計数率に強いもの)を用いた。KEKの実験条件(2.5×10^6/secのπ^+ビーム)では計数率が約40kHz、deadtimeが約50%であり、このうちpile upによるdeadtimeは半分に過ぎず、残り半分は、検出器を高エネルギー粒子が突き抜ける際の大きなenergy depositによってプリアンプがresetし、アンプ系のoverloadが起こることが原因であった。波形解析の方法は、pile upのみがdeadtimeをもたらす通常の条件では威力を発揮する。高エネルギービームを使うハイパー核実験等ではアンプのoverload deadtimeを減らす工夫も必要である事がわかった。
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