大強度の陽子加速器は高エネルギー、原子核物理学のみならず、中性子散乱やミュオンを用いた広範囲な物性、生物、化学実験に極めて有用であることから近年注目されている。この実現にはさまざまな加速器技術の開発が必要であるが、中でもビーム損失を押え安定にすべてのビームを加速するための高周波加速空胴と高周波電源と高周波制御システムの開発が必要不可欠である。近年、高周波加速空胴に関して金属磁性体を用いた従来を一桁上回る高加速勾配を持つ新型加速空胴が開発され、次世代の大強度陽子加速器の加速空胴として注目されている。 この加速空胴は広帯域であるため、従来まで加速システムのトラブルの原因であったバイアス電源を用いたチューニングシステムが不要である。本年、より広い安定領域を持つことが回路シミュレーションコードを用いた制御回路の解析によって明らかになった(本年3月KEKにおいてAPAC98で発表予定)。 また、電圧制御発振器を製作し、動作を確認した。また、小型の簡易型DSP(デジタルシグナルプロセッサ)を購入し、基本動作を確認した。これまで、国内では陽子加速器の高周波制御はアナログ方式か基本であり、次期の大強度陽子加速器の基本設計においてもこのアナログ方式がまず考えられているが、この様なDSP、DDS(ダイレクトデジタルシンセサイザー)、デジタル櫛形フィルターなどを高周波制御に用いることにより、アナログ方式では選ばれなかった再現性や安定性が選ばれることが今後期待できる。
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