研究概要 |
近年、大強度(ビームパワーにして約1-5MW級)の陽子加速器は高エネルギー、原子核物理学のみならず、中性子散乱やミュオンを用いた広範囲な物性、生物、化学実験においても極めて有用であることから、その実現が広範な研究分野から待望されている。しかしながら、この実現にはさまざまな加速器の技術開発が必要であり、とりわけビーム損失を押え安定にすべてのビームを加速するための高周波加速システムの開発が必要不可欠である。この高周波加速システムは加速空胴および高周波増幅器のハイレベルRF部とその制御を行うオーレベル部から構成される。近年、高周波加速空胴に関して金属磁性体を用いた従来のフェライト空胴の性能を一桁上回る高加速勾配を持つ新型加速空胴が開発され、次世代の大強度陽子加速器の加速空胴として注目されている。このような加速空胴をハイレベルRFに用いることに従来まで加速システムのトラブルの原因であったバイアス電源を用いたチューニングシステムが不要である。本年、このことはローレベル系の制御に広い安定領域を与えることが回路シミュレーションコードを用いた制御回路の解析によって明らかになった。また、これにより従来のシステムでは不可能であった多変数のフィードバック制御が可能となった。またこの空胴により多周波数でのRF制御を行いより大電流のビームを加速できる可能性が出てきているが,この制御のためには最終的に超高速のDDSシステムが必要となるが、そのための基礎的開発として、電圧制御発振器を製作し、動作を確認した。また、小型の簡易型DSP(デジタルシグナルプロセッサ)を購入し、基本動作を確認した。今後DDSシステムを更に改良開発し実際のビームの加速に使用することを目指したい。このようなDDSを用いたビーム加速制御の可能性は本年四月米国で開かれるPAC国際会議の招待講演の中で話す予定である。
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