前年度は、スカラ一場の非線形効果(パラメーター共鳴)による計量の長波長ゆらぎへの影響を、繰り込み群の方法を用いて評価し、その宇宙論的な影響を議論した。本年度は、前年度用いたゆらぎの解析方法に関する理論的定式化をより完全にする方向で研究を進めた。 1) 宇宙論的な長波長摂動の一般的な定式化:一様等方宇宙からの長波長摂動は、背景時空の情報(背景解の積分定数)だけから、その振る舞いを決定することができる。これをハミルトン-ヤコビの方法を用いることで一般的に証明し、ゲージ不変摂動解の具体形を与えた。この方法を用いると、任意の膨張則を持つ宇宙でのゲージ不変長波長摂動の振る舞いを、非常に簡単な手続きで求めることが可能となる。 2) 繰り込み群の方法の性質:再加熱時の解析において用いた、繰り込み群の方法自身の性質について解析を行った。その結果、ハミルトン系において、背景解の変数分離性と、繰り込み群方程式の正準性との間に関係があることを発見した。 長波長摂動と繰り込み群を組み合わせる方法は、宇宙論における非線形現象を摂動論的に解析する新しい方法であり、宇宙論におけるさまざまな非線形現象に適用可能であると期待される。
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