1.弦理論に基づいて、T-双対性を考慮した宇宙模型を用いて宇宙初期における時空の概念の変更について議論した。弦理論には、運動量に共役な通常の座標xと巻き付き数に共役な座標qの2種類の座標が存在する。両者は非可換なため同時に対角化することはできず、現在のような大きな宇宙ではxのみが座標として認識されている。しかしながら宇宙初期においてプランク長さ程度の大きさの宇宙においては両者は混在し、その間に遷移が起こると考えられる。ここでは有限温度における弦の運動量と巻き付き数の相関を計算し、これを基に宇宙初期における、xとqの間の遷移を議論した。 2.I型超弦理論におけるD5-braneの基底状態を記述する。位相的場の理論を構成し、これを用いてD5-braneの第2量子化について考察した。その結果、数学では既に知られていた、インスタントンのモジュライ空間上のハイゼンベルク代数が丁度、D5-braneの生成消滅演算子と解釈できる事を見出し、これによってD5-braneの第2量子化を定義することができる。ことを示した。 3.I型超弦理論とT-双対なI'型超弦理論において任意の振幅を求めることができる生成関数を構成した。これを用いて、I型超弦理論においてはディスクと実射影空間という異なるトポロジーの間で実現していた無限大の相殺が、I型超弦理論ではどのように実現されているかを考察した。その結果、I'型理論に特徴的な存在であるorientifold plane上に境界を持つディスク振幅が、正しくTad pole振幅とそれに伴う発散を相殺している事を示した。
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