この研究における本年度の目的は、相対論的原子核理論(σ-ω模型)において、くりこみ群的な手法に基づき、1ループレベルで原子核および核物質に対する有効ラグランジアンを導出し、それに基づき真空効果や密度効果を計算する事であったが、この目的はほぼ予定通り達成された。 より具体的には、実施計画の1番目の有効ラグランジアン導出については1ループのHartree近似計算およびRandom Phase Approximation(RPA)計算の双方に使える有効ラグランジアンを導出した。その際、物理的結果から、計算の過程で導入した切断依存性を取り除くためには、切断の2乗の逆数に比例するirrelevantな相互作用が重要である事を示した。この結果は平成9年の日本物理学会秋の分科会で発表し、また、佐賀大学理工学部集報に発表した。 実施計画の2番目の数値計算も実行し、この定式化によって、有限切断の導入にもかかわらず、中間子自己エネルギーの分散関係が十分に保たれ、理論が整合的である事を数値的に示した。また、計算結果の切断依存性は、切断の2乗の逆数に比例する相互作用の導入により、十分に除かれる事を示し、この方法が有限切断を持つと考えられる相対論的原子核理論においてたいへん有効である事を示唆した。これらの成果も平成9年の日本物理学会秋の分科会で発表した。 実施計画の3番目の現象論的比較についても解析を行い、この方法でHartree計算を行う事によって得られたパラメータが核物質の性質をよく再現する事がわかった。 RPA計算については、現象論的解析が現在継続中であるが、その成果を次の日本物理学会年会で発表する予定である。
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