研究概要 |
本年度前半:g_2(x,Q^2)のフレーバー一重項部分の一番低次のモーメントに対応するツイスト3局所複合演算子のくりこみを行い,異常次元を計算した。これにより,フレーバー非一重項部分の計算で我々が開発した"射影の方法"を,フレーバー一重項部分の場合に拡張した。グル-オン場がボ-ズ統計に従うため,グル-オン場のみからなるツイスト3演算子の場合への拡張には注意を要した:1.射影のための補助的なベクトルとして,2つ独立なものを用意する必要がある事が明らかとなった。2.これら2つのベクトルが互いに直交するように付加条件を課した場合にゲージ不変でない演算子のoperator mixingを完全に除く事が出来,特に取り扱いが簡単化できる事がわかった。 また,我々の結果を他のグループの計算結果と比較した:1.我々の求めた異常次元は他のグループの結果と一致し,我々の方法の有効性が示された。2.Bukhvostov,Kuraev,Lipatovの軸性ゲージでの非局所演算子のくりこみに基づく計算は,最も標準的かつ今回我々の用いた方法である局所演算子の共変ゲージでのくりこみに基づくものと,計算の具体的手続きが大きく異なる。このためこれら2つの方法の関係は明確でなく,特に,QCDの運動方程式に比例する演算子の扱いについて専門家の間でも混乱があった。我々は,この点を掘下げるために,ツイスト3演算子の非前方行列要素を考察し1粒子可約なダイアグラムを計算した。これに基づいて,2つの方法の関係を明らかにした。 本年度後半:g_2(x,Q^2)のフレーバー一重項部分の任意のモーメントの場合に,対応するツイスト3局所複合演算子の独立な組の異常次元行列の計算を進めた。フレーバー非一重項部分の場合に比べ計算は格段に複雑になる事が判明したが,いくつかのダイアグラムについては計算を終了した。今後,平成10年度前半にかけて残りのダイアグラムの計算を完成させ,Bukhvostov,Kuraev,Lipatovの軸性ゲージでの計算結果と比較していく。
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