少数核子系は、二核子系の実験データを精密に再現する「現実的核力」を用いて、量子力学の第一原理から数値的に精密に解き得るという点において、原子核物理学上極めて特徴ある系である。特に、三・四核子系の束縛・反応状態の研究は、核物理にとって重要且つ基本的課題の一つであり、宇宙・天体における元素合成反応や核融合反応炉内での核融合反応の解析等、その応用範囲は極めて広い。 本年度の研究では、応募者らが開発したこのGauss型基底関数系を用いる「組み替えチャネル結合変分法」の枠組みを拡張し、三・四核子(ハドロン)系束縛・反応問題に応用するための定式化を行った。同時に、本科研費で整備したパーソナル・ワークステーションを用いて中心力のみの四核子系束縛状態等の試験的数値計算を実際に行い、精度や計算時間についての情報を蓄積した。 また、中性子非発生核融合炉の建造可能性と密接に関係している極低エネルギーd+d→^3He+n反応の微分断面積及びベクトル・テンソル偏極量を弱スピン依存力近似に基づく不変振幅法と、四体系を数学的に厳密に扱うことのできる理論的枠組みであるFaddeev-Yakubovsky法の二つの方法により解析した。不変振幅法による解析により、スピン偏極した重陽子を利用することによる中性子発生の抑制には限界があることを明らかにした。Faddeev-Yakubovsky法による計算結果とも比較し、結果が相互に矛盾しないことを示した。
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