研究概要 |
本研究の目的は、有効模型を用いたバリオンの励起状態の研究によって,QCDの非摂動効果の性質を調べることである.そのために,バリオンの空間的な構造,およびカイラル対称性の発現の様子の2つの観点に基づいた研究を行った. 1 変形核子模型によるバリオン励起の研究 クォークの閉じ込めの力学を簡便に扱うために,非相対論的なクォーク模型を採用し,バリオンの変形について調べた.まず,SU(3)バリオン励起の質量を調べ,そこに変形による回転バンドが現れていることを示唆した.さらに電磁崩壊の行列要素の計算を定式化し,簡単な場合について数値計算を行った.この研究の成果は,国際会議QUELEN'97(大阪大学),国際会議APCTP workshop(ソウル大学),日本物理学会1997年秋の分科会における講演で口頭発表し,前者2つの報告は会議録に掲載予定. 2 バリオンのカイラル対称性 2点相関関数を用い,バリオンのカイラル対称性について調べた.負パリティーバリオンとπメソンとの結合に低エネルギー定理を見いだした.バリオンの場を群論的に分類し,負パリティーバリオンの擬ベクトル定数の重要性を指摘した.さらに,正負パリティーのバリオンを含む有効模型として線形シグマ模型を構築し,バリオンの性質における,カイラル対称性とその自発的破れの現れ方を具体的に調べた.この結果は,前出の2つの国際会議における会議録,Physical Review Letters,および,Physical review D(予定)に掲載された.
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