強い共有結合で結ばれた2配位鎖状構造を持つカルコゲン属のセレン(Se)とテルル(Te)は、固体では半導体であるが、融解と共にその性質を大きく変えることが知られている。即ち、融点近傍ではセレンは半導体的性質を示すのに対して、テルルは金属伝導を示す。さらに、液体セレンは高温・高圧下で半導体一金属転移を引き起こす。金属化と共に価電子帯と伝導体を構成するσバンド、Lone Pair(LP)バンド、σ^*バンドは大きく変化することが期待される。 本研究では、過冷却液体状態を含む液体セレンと液体テルルの光反射率を測定し、液体状態における鎖状構造の結合状態や鎖間同士の相互作用についての情報と金属化のメカニズムに関する新しい知見を得ることを目的とする。 そのために、平成9年度は分光器、光検出器、各種光学部品等を用いて高温液体試料の光反射率を測定可能とする反射率測定装置を設計・製作した。高温での測定は、試料セルをセットする電気炉からの熱輻射が無視できないために光学系は、光源、チョッパー、試料、分光器の順に構成し、ロックインアンプを使った位相検波が不可欠となる。次に、製作した装置を用いてアモルファスセレンと結晶テルルの固体試料の反射率スペクトルを測定した。得られた反射率スペクトルから振動子フィッティング法を用いてε1、ε2の誘電関数及び光学伝導度を導出した。これらの光学定数は報告されている文献データとよく一致する。 来年度は、以上の実績をふまえて液体セレンと液体テルルの反射率を測定する予定である。
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