強い共有結合で結ばれた2配位鎖状構造を持つカルコゲン族のセレン(Se)とテルル(Te)は、固体では共に半導体であるが、融解と共にその性質を大きく変えることが知られている。即ち、融点近傍でセレンは半導体的性質を示すのに対して、テルルは金属伝導を示す。さらに、半導体の液体セレンも、高温・高圧下では半導体-金属転移を引き起こし金属化する。 本研究では、過冷却液体状態を含む液体セレンと液体テルルの光反射率を測定し、液体状態における鎖状構造の結合状態や鎖間同士の相互作用についての情報と金属化のメカニズムに関する新しい知見を得ることを目的とする。そのために、分光器、光検出器、各種光学部品等を用いて反射率測定装置を製作した。さらに、1100℃の高温まで液体試料の光反射率を測定可能とする石英ガラス製光学セルを作製した。得られた液体セレンと液体テルルの反射率スペクトルを振動子フィッティング法を用いて解析し、誘電関数及び光学伝導度を導出した。 その結果、以下のことが明らかになった。 1) 融点直上の液体テルルの光学伝導度スペクトルは、近赤外領域にドルーデ項が現れ、金属伝導を示す。また、2eV付近に見られるLP-σ^*光学遷移に相当するブロードなピークは、液体テルルが金属化しても2配位鎖状構造が残存することを示唆している。 2) 液体テルルを融点から過冷却させていくと、ドルーデ項は次第に減少する。350℃以下で光学ギャップが開き、半導体になる。 3) 融点直上の液体セレンは、約1.6eVの光学ギャップと3.5eVのブロードなLP-σ*ピークからなる半導体的なスペクトルを示す。温度の上昇と共に、光学ギャップは減少し、LP-σ*ピークはレッドシフトする。
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