研究概要 |
試料は,格子定数700nmのアンチドット正方格子にショットキーゲート電極を付加し,このゲート電圧を制御することで,量子ドット格子からアンチドット格子へとチャンネル幅を制御している. 量子ドットアレイの領域では,一電子帯電効果によって,電子が電荷ソリトンとしてドットアレイ中を運動することがわかった.これは電流電圧特性に,一電子の注入を示すしきい電圧が生ずるところから確かめられた.半導体ドットアレイ中でソリトン的な伝導が確かめられたのは恐らくこれが初めてである.接合容量と自己容量の比C/C_0〜1と見積もることができ,ソリトン半径が格子定数程度の電荷ソリトンができていると考えられる. 次にアンチドット格子領域を見ていくと,高磁場下5T,10Tで整数ホール効果により縦抵抗が0となる.チャンネル幅の減少と伴に,電子の後方散乱が大きくなり有限の縦抵抗が生じてくるが,この時抵抗の立ち上がり部分にエッジ状態に由来するAB振動が観測された.AB振動は大きなサイズのアレイでは平均化され消えてしまうことがわかっているので,ここで観測された結果から,エッジ状態間の散乱が比較的少数のアンチドットが関与して起こっていることが分かる。 また2T以下の低磁場では,アンチドット4個,1個に対応する整合ピークがそれぞれ観測されている.注目すべきは半径170nmのサイクロトロン運動に対応する整合ピークが見えることで,4つのアンチドットに囲まれる中央にできた軌道に対応すると考えられる.さらに20mT以下の弱磁場領域では,負の磁気抵抗と,それに伴ったアンチドット格子を一回りする周期に対応するAAS振動が観測された.
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