(1) p型変調ドープ量子細線試料の強磁場下発光スペクトルの測定により、電子正孔間遷移の磁場依存性が非ドープ量子細線より非常に大きいことがわかった。自己無撞着ハートレー計算との比較により、観測された磁場下での大きなエネルギーシフトは、ドーパントイオンにより正孔ガスの分布が空間的に非対称になることにより、電子-正孔間光遷移が間接遷移になることに起因することを示した。量子細線構造をはじめとするナノメートル構造試料においては、従来、単一へテロ構造で考えられたようにドーパントイオンを一様なものとして近似するのは不十分で、ドーパントイオンを離散的なものとして扱うことが必要であることを実際に示した。 (2) 間隔250nmの網状金属電極構造を電子ビームリソグラフィーによりn型変調ドープ量子井戸試料表面上に作製した。この表面網状金属電極と伝導性の裏面電極との間にバイアス電圧を印加することにより、電子ガスと局所的ドーパントイオンの分布の制御を試みた。バイアス電圧を印加するに伴い、発光スペクトルのフエルミ面近傍に量子ドットが結合状態にある際にこぶ状構造が現れるのを観測した。この構造は電子ガス-正孔間相互作用が外部ポテンシャルにより変調される効果によるものと考えられる。また、バンド端より9meV低いエネルギーに緩くポテンシャルに捕縛された状態からの発光を観測し、その発光強度がバイアス電圧に極めて強く依存することを見いだした。
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