研究概要 |
本研究では、ジョセフソン・プラズマ共鳴を用いることによって、擬2次元有機超伝導体の混合状態について新たな知見を得ることを目的とした。この現象は、ジョセフソン結合している超伝導層に垂直な方向での超伝導キャリアのプラズマ周波数が、磁場をかけることにより非常に低エネルギーにシフトし、マイクロ波領域の測定で共鳴としてあらわれるというものである。この共鳴の周波数依存性や温度依存性を測定することにより、超伝導層間の秩序パラメータの位相差の情報を定量的に決定できることが知られており、量子化磁束の面間方向の相関を議論できる。今年度の研究により、以下のような成果が得られた。 まず、測定装置について、今まで用いていた24,41GHz共振器に加え、新たに12および56GHzの共振器を作製した。これにより測定周波数領域が大幅に拡大され、量子化磁束の面間方向の相関について広範囲の議論が可能になった。 次に、BEDT-TTF系の有機超伝導体単結晶について、微小Hall素子を用いた局所的な磁化測定を行い、磁束系の1次相転移の兆候である磁化の跳びを発見した。これは高温超伝導体でも見つかっている相転移と同様のものであり、この相転移が層状超伝導体に共通する性質であることが明らかになった。 さらに、同じ試料においてジョセフソン・プラズマ共鳴の測定を行い、その相転移ライン近傍で磁束の面間方向の相関がどのように変化するかを調べた。その結果、相転移ラインより高磁場の磁束液体状態では、共鳴磁場が測定周波数を上げるほど下がるのに対して、相転移ライン上では、共鳴磁場が周波数に依存しなくなるということがわかった。これは、磁束の面間方向の相関が、磁場の関数として相転移点において急激に減少することを意味しており、この相転移が面間の相関が切れるデカップリング転移であることを強く示唆している。
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