液体ヘリウムの表面(界面)の研究は、他の液体とは異なり、表面特有の素励起の存在やバルクの素励起がどのように表面に影響を与えるか、という基本的な問題を提起して興味深い。本研究で取り上げる^3He-^4He相分離界面は、圧力を加えることで相分離した2相のバルクの性質を制御できるというユニークな特徴を持つ。 本年度は、まず圧力下で0.15Kまでの低温域の界面張力の測定を行ない、界面張力の圧力依存性を明らかにした。界面張力は7気圧までの低圧域では圧力の増加とともに減少し、7気圧以上の高圧域では圧力にほぼ依存せず一定の値をしめす。界面張力の圧力依存性が測定されたことで、これまでにしられている^3He準粒子の化学ポテンシャルの圧力依存性と合わせて、界面での^3He吸着量を求めることが可能になった。解析の結果、7気圧までの低圧域では、界面張力の減少に対応し^3Heが界面から排除される負吸着が起こっており、その大きさは圧力の増加とともに減少するという知見が得られた。これは、定性的には^3Heと^4Heとの零点振動の大きさの違いにより説明されると考えている。これらの結果は論文として報告した。 引き続き0.15K以下の低温域での界面張力の測定システムの設計・制作を行った。低温域では混合液の粘性が増加するため界面張力の測定法として毛細管上昇法を用いなくてはならない。具体的には、100μm程度の狭いギャップを持った平行平板電極内の界面上昇を、Cブリッジを用いて静電容量の変化として測定し、界面張力を求める。測定システムはほぼ完成し、予備的測定の準備を進めている。
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