研究概要 |
平成9年度は、質量選別光電子分光を行うために必要な光源及び光電子分光器のを製作して、その性能評価及び実際に試料としてカルコゲンクラスターを用いて予備的な実験を行った。 光源は高圧窒素ガス中での放電を利用した自励式ナノ秒フラッシュランプを作製し、150nm付近の波長域で10^7photon/pulse程度の強度があることを確認した。 光電子分光器はボトルネック型の不均一磁場によって電子の収束を行う飛行時間型光電子分光器を作製し、実際に金のd-bandの構造を測定することで装置の評価を行った。 自由空間中のクラスタービームに対する予備的な実験として、カルコゲンとイオン化エネルギーの値が比較的近く、取扱の容易なトリエチルアミン(TEA)を試料として、質量選別光電子分光を行い、TEAの最上被占分子軌道(HOMO)の構造を測定する事で、光源、光電子分光器及び計測回路の調製を行い、装置全体としての分解能などの評価を行った。 セレン及びテルルのクラスタービームにたいしても同様の測定を行い、現在までにSe_5,Se_7,Te_2などの比較的ビーム中に多く存在するクラスターで質量選別光電子分光を行い、光電子スペクトルを得ることに成功した。Se_5及びSe_7クラスターではそのHOMOをしめるLone Pairの軌道が、分子構造の対称性が低いためにエネルギー的な縮退がとけており、過去に行われた半経験的な分子軌道計算の結果とも一致することが確認された。
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