量子揺動のために輸送現象はじめ種々の非平衡現象に新しい現象が起きることが明らかになってきている。特に、メゾスコピックな金属磁性体における電気伝導における磁性不純物や境界条件での磁性状態の効果について研究してきた。対応するいろいろな実験のグループとの連絡を密に取り、新しい現象の特徴の把握に努めた。また、ドイツのマックスプランク研究所との共同研究も始めた。メゾスコピック系の伝導に関しては、ドラーツ氏の協力で電子の波動関数がドメイン壁を通過する場合のシミュレーションを行い、不純物の有無による電気伝導度の増減について調べた。また、電子の磁性不純物の効果を取り入れた数値シミュレーション法をオランダ・グローニンゲン大学のドラーツ、ミシュルセンらによって開発された量子運動に関するコードを利用して開発し、種々の条件下における伝導の特徴を明らかにしようとしている。(1999年春の学会で発表予定) また、空間的に反転対称でないポテンシャルのもとでの外部揺動効果に関して量子効果によるラチェット効果についても研究した。まず、特定の条件のもとでの遷移確率に関する表式を求めた。次に、対応する量子ダイナミックスに関する数値シミュレーションを、熱浴と結合した系において熱浴の自由度を消去した縮約密度行列の方法で作り、実際の微小磁性体のヒステリシス現象に応用した。行った。量子効果と熱の効果の相乗作用によって、ラチェット効果によって生じる粒子流の方向がいろいろな値をとることがわかった。
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