本年度は主に希ガスのキセノン(Xe)の超高圧力下実験直前までの準備的実験及び実験装置の開発を行った。高圧力下におけるXe固体は細密構造のfcc結晶構造をとる。それに対し沃化セシウム(CsI)は六配位のNaCl型構造を持つが電子構造はXeと同じ5s^25p^6の閉核構造を持つ。つまり、加圧初期における結晶構造には違いがあるがXeへ至るプロトタイプとして期待される。また、Xeが常温常圧において気体であるのに対してCsIは固体なので従来の方式で加圧が可能である。 CsIを加圧していったところ、電気抵抗は大きく減少していき110万気圧において電気抵抗の変化に折れ曲がりを生じた。そこでその前後の圧力において電気抵抗の温度依存性を測定したところ、110万気圧を境に温度依存性は半導体的な依存性から金属的に変化することがわかった。この圧力値は光学的測定である反射率測定等により予想されていた転移圧力に良い一致を示した。この事からCsIの圧力誘起金属転移は110万気圧であると結論した。 Xeは低温状態で液化または固化させた状態で高圧セルに封じ込める必要がある。またXeは融点と沸点が接近しており液化状態で封じるには温度調節が難しいことから、固化した状態で封止できる様にかつ高純度で行えるように封止装置を開発した。CsIにおいて上記の結果を得たことと合わせて次年度に計画しているXeの加圧への準備が完了した。
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