1.CePにおける磁気体積効果 CePは約10Kで反強磁性秩序を示す少数キャリヤ-物質である。これまでの精力的な研究から様々な興味深い現象が観測されているが、今回は特に磁気-温度相図の類似性の解明を目的に磁歪、熱膨張測定を行った。この物質は、大型の純良単結晶試料の作成は非常に難しく、今回用いた試料のサイズは1mm角程度のもので、精密な測定が要求される。そこで実験は高感度三端子容量法を用いて行った。磁場印可に伴うCe^<3+>のГ8状態の出現に伴い体積は著しく減少し、昇温によって転移点(一次転移)を通過するときにこの格子の縮みが一挙に解消される。この大きさは磁場を高くするほど大きくなる。解析から得られた転移点の圧力依存性は、高圧下の電気抵抗測定で得られている値と定量的に一致する結果となった。このことから磁場印可に伴い逐次出現するГ8状態は体積を著しく減少させることが明らかとなった。叉転移温度以下での格子変形をГ8モーメントの強磁性面の出現だけによるものとして、CeSbにおける転移点以下の格子収縮からどのくらいの割合で強磁性面が基底状態で存在するかを計算すると、約20枚周期となる。ゼロ磁場の基底状態においてГ8の存在を初めて示した結果である。(論文投稿中) 2.U2Rh3Si5における磁気弾性カップリング この物質は最近オランダのグループによって単結晶試料が作成され現在共同研究を行っている。もっとも興味深い点は約26Kの反強磁性転移点での物理量の変化が特異的であることである。比熱、電気抵抗、帯磁率測定では転移点付近の非常に狭い領域で一次転移的な振る舞いが観測され、物理量の飛びが見られる。ウラン化合物における四重極秩序は現在までにUPd3やUO2(f.c.c.)で観測されているのみであるが、この物質においてもスピン系と格子系が強くカップルした四重極秩序の可能性があることから熱膨張測定を行った。その結果転移点では他の物理量と同様に一次転移的な振る舞いが観測され、この点において格子が急激に変化する(非常に狭い温度領域で不連続に飛ぶ)ことが明らかになった。磁場を印可すると転移点が低温側へシフトするとともにその変化量が大きくなり、12T(テスラ)の強磁場中では1X10^<-4>にもなる。また磁歪測定では14Tでのメタ磁性転移に伴い異方的で非常に大きな磁歪が観測され、その大きさは四重極転移を示すUPd3における磁歪より数倍大きい。以上のことからこの物質における異常な磁気相転移は格子系と非常に強くカップルしていることが明らかになった。
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