研究概要 |
本研究では、極低温にて比熱の磁場依存を測定する装置を開発し、メタ磁性異常を示す重い電子系化合物の熱物性を系統的に調べた。 本装置の特徴は、最低温度約100mK最大8テスラの磁場下で、一定温度における比熱の磁場依存および磁気熱量効果の測定が可能なことであり、これによりメタ磁性異常の熱測定による研究が可能となった。以下の物質を中心に研究を行った。 CeRu_2Si_2:この化合物は、常磁性基底状態でありながらB_M=約8テスラでメタ磁性的異常を示す、重い電子系における典型的化合物である。比熱の磁場依存測定により、0.5K以上の温度で比熱の磁場依存にダブルピーク構造がB=B_Mに現れることを初めて見出した。このピーク位置は温度上昇に伴い、互いに離れていく。磁気熱量効果の磁場依存には,B=B_Mにおいて、負から正の大きな異常を見出した。熱力学的関係式をもとに解析することで、B=B_Mにおいても0.2K以下には異常な残留エントロピーが隠されていないことが結論できる。これらの実験結果が、準粒子バンドに形成された異常な状態密度のピーク構造で説明できることが分かった。この状態密度のピーク構造の起源として、結晶場基底状態の異方的混成効果が考えられることを示した。 CeCu_6:メタ磁性的異常はCeRu_2Si_2と比べて非常に小さいが、基本的に同様な異常を比熱および磁気熱量効果に見出した。CeRu_2Si_2と同様な機構による可能性を示唆している。 CeNi_2Ge_2:比熱の磁場温度依存測定により、ゼロ磁場中で観測される非フェルミ液体状態が、スピン揺らぎもしくは異方的混成に起因すると思われる準粒子状態密度の構造として説明できることを示した。 その他、UCoAl及びNdGa_2のメタ磁性に関連した比熱異常を調べた。
|