電子間のクーロン斥力が非常に大きな2次元電子系における基底状態を解明するために、シリコンの反転層に形成された電子系に対して、対角抵抗率の温度、磁場、磁場方位、電子濃度に対する依存性を詳細に調べた. 絶対零度での対角抵抗率が無限大になる絶縁体領域に対しては、これまで我々が考案したモデルを本研究でさらに発展させることにより、対角抵抗率の温度依存性から得られる活性化エネルギーの磁場(方位を含む)に対する変化を本質的に説明することができた.そのモデルは、クーロン反発によって形成された三角格子中のリング状の交換相互作用によってもたらされた「磁性」を出発点とするものである(研究発表). 一方、高移動度のシリコン2次元電子系の金属領域に対して、様々な知見が得られつつある.この系では、ゼロ磁場における温度の低下に伴う電気伝導率の異常な増大が知られていた.本研究では、電子の磁気モーメントのみに作用する2次元面に平行な磁場の効果を調べた.高磁場中では温度の低下に伴う電気伝導率の異常な増大は全く見られなかった.絶縁体領域と同様に、金属領域での対角抵抗率の温度や磁場に対する依存性も電子のスピンが大きく関与していると考えられる. これまで、温度の低下に伴う電気伝導率の異常な増大はSi電界効果型トランジスター試料において絶縁体との相境界付近の電子濃度で観測されていたが、我々はSi/SiGeヘテロ接合試料を用いることによって電気抵抗の非常に小さい領域でも大きな温度変化を観測した.
|