超伝導状態における集団励起を研究、本年度研究課題に対し以下の成果を得た: (1)超伝導状態におけるゴールドストーンモード(Carlson-Goldmanモード)をクリーンからダ-ティな系まで統一的に研究した。その際、熱的に励起された準粒子によるランダウ減衰の効果を正しく考慮、更に実験的に観測できる量である位相揺らぎスペクトルを計算し、観測可能性についても検討した。その結果、従来の理論予想とは異なり、Carlson-Goldmanモードはクリーンな系では強いランダウ減衰の為、スペクトル中ではぼやけてしまい事実上観測できないことを明らかにした(ただし存在はする)。他方、ダ-ティな系では不純物散乱によってランダウ減衰が抑えられ、スペクトル中にピーク構造を作ることが分かった。加えて、クリーンな系での位相モードの速度を研究し、従来、転移温度から測った温度の1/4乗に比例するとされていたのに対し、正しい結果は1/6乗であることを明らかにした。 (2)超伝導状態におけるCarlson-Goldmanモード以外のもう一つの集団励起であるプラズマモードについて研究、クリーンな系においてはそのエネルギーの大小、秩序パラメータの対称性にかかわらず波数0のプラズマモードは超伝導の影響を受けないことを証明した。これはプラズマモードでは超伝導、常伝導成分が同じ運動(in-phase motion)をすることに起因するものである。この為、酸化物超伝導で観測されているような、エネルギーギャップより低いエネルギーを持つプラズマであっても系がクリーンである限り、その周波数は転移温度以上、以下で変化しない。また、バンド構造のプラズマモードへの影響についても研究、フェルミ面がある方向で開いていると、それに応じてその方向に対するプラズマモードに参加する電子数が減少、モードエネルギーが下がることを見出した。
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